六次産業化で気になる数字〜「最近よく耳にする「六次産業化」ってなに?」『家の光』7月号

農林水産業はいうまでもなく、第1次産業。
これに製造業の第2次産業、サービス業の第3次産業の1+2+3で六次産業である。
つまり、農産加工や農家レストランなど農業経営を多角化しようというのがその主眼にある。


『家の光』7月号はこの文脈をこう語る。

この背景には、日本の農林水産業の利益率の低さがあります。
日本の食品産業の国内生産額は、約81兆7000億円(2007年度)ですが、一方の農業総産出額は、約8兆3000億円(2007年度)。

そして、国の具体策はこの二本立てを紹介。

●「農業主導型六次産業化整備事業」
●「農業六次産業化に係る農商工等連携促進施設整備支援事業」

要は、自分で手を挙げて、多角化のために補助金もらうか、多角化を目指し業者と連携するための施設整備など環境整備のために補助金もらうかということ。
締めくくりはこう。

農商工連携では、利益の大半が商業者・加工業者に流れてしまい、農業者は結局素材を安価に提供するだけという不公平な連携関係も、近年は指摘されています。対等なパートナーシップを結べる連携相手かどうか、事前によく話し合いを!


8兆円で思い出したのは、

2008年度コンビニ売上高は8兆1514億円、上位3社でシェア7割弱 帝国データバンク調査:nikkei BPnet 〈日経BPネット〉
2008年度コンビニ売上高は8兆1514億円、上位3社でシェア7割弱 帝国データバンク調査
2009年9月25日

そして、同時期に発覚したその影の部分。

http://www.toyokeizai.net/business/strategy/detail/AC/790de992889da43caed4e069dff141bf/page/1/
 セブン−イレブン・ジャパンは販売期限の迫った弁当類の値下げ問題で、公正取引委員会公取委)から出されていた排除命令を8月中に受け入れる方針を固めた。
 問題となったのは、セブンが加盟店に対して弁当類の値引き販売をしないよう事実上の強制をしていたこと。公取委はそれに対して、「優越的地位の濫用」を適用した。
 「加盟店とはあくまでも対等」「店舗指導にやりすぎがあったのは一部の店舗だけ」。セブン社内ではこんな主張が根強かった。だが最終的にセブンは、勧告の受け入れに転じた。

この問題については、むしろこっちが先駆的指摘かもしれない。
小学生が栄養失調寸前 両親はコンビニ経営 コンビニ残酷物語か? それとも「食育」の前提が崩壊してるのか: 天漢日乗


8兆円だからといって関係ないわけだが、ビジネスモデルの成功例は、多かれ少なかれ阿漕な経営戦略の影がつきまとうということをいいたいのである。
そのダークサイドに落ちてしまう背景には、小さなリスクの連続と勝負し存在感をアピールしつづけるより、阿漕でも安定的な利を求める絶えざる誘惑がある。
六次産業化について、安直なノウハウが業となってしまうことが、一番気をつけなければならないことのような気がする。


追記
セブンイレブンの手法について、改めて思い直したことをしたためておきたい。
この手法って、実は↓とよく似ている。

無効なURLです
全国一のキャベツ産地である愛知県の「JAあいち経済連」は5日、豊作で価格が低迷しているキャベツを、生産調整のため廃棄処分する方針を固めた。全国農業協同組合連合会(全農)を通じ、6日にも農林水産省に届け出る。廃棄は数千トンになる見込み。
(中略)
 野菜価格が低迷した場合、過去9年の平均価格の7割を下回れば廃棄処分し生産調整できることになっている。この時期にキャベツを廃棄処分する場合、全国野菜需給調整機構の「野菜供給安定基金」から1キロあたり27円が生産農家に交付される。

供給>需要で値崩れが起こるのは当然の原理である。
それを食い止める弥縫策という点で、基金の交付も、値引き販売の強制も共通している。
このことは、一次産業にとどまらず、小売りのような三次産業にも成長の限界がきており、何次産業であろうと安住の地がないことを示しているのである。


こうなるとどんなことが起きるのか。
企業努力で差異を生み出す。その差異が好転を導けばよいが、そうとも限らない。

食品スーパーマーケット最新情報: トライアルカンパニーの現状を見る!
当然、これだけ低い粗利率で利益を出してゆくには、それ以上のローコストの仕組みが必要であり、トライアルカンパニーの販売費及び一般管理費をみると、売上対比14.86%と15%を切る驚異的な比率である。
(注:小売りということで、例に挙げてみた)

2ch ビジネスニュース+ ダイジェスト: 【労働】総務や経理まで中国へ業務移転:日本からホワイトカラーの仕事が消えていく [08/10/23]
事業の魅力を求めるのでなく、事業管理費の圧迫という緊縮の方向はデフレの道へ続くわけで・・・
安直なノウハウを業とするものが登場することを揶揄したのは、事業の魅力を追求する方向性を前提としなければ尻すぼみになることを強調したかったのだと言い訳して、擱筆したい。