優しさにあふれる「てっぱん」〜NHK朝の連ドラ

葉加瀬太郎のバイオリンに、ゆるきもな踊りがはじまると、朝の慌ただしさからの定時出勤に間に合うかの焦りと、少しぐらい時を忘れたいという怠け心が葛藤する。
出勤途中の車のなかで、毎朝僕が繰り返していることだ。


今回の「てっぱん」について、最初は見る気などさらさらなかったが、いろんな意味での優しさにやられてしまった。


1.僕=視聴者への優しさ
まずは、視聴者への優しさである。
見る気がさらさらなかった僕は、当初通勤途中に見ていなかった。
それに今でさえ、見逃したからといって、特別どうにかしようとはしていない。
でも、話の筋がわかるのである。
というのは、最初の2〜3分みれば、前回のことがまるっとわかってしまう。
それに、登場人物がほぼ固定的でキャラ立ちしているので、新たな登場人物がいたところで、だいたいのことはわかってしまう。
感動的なまでに、優しいではないか!


2.主人公への優しさ
次に二つの意味で主人公に優しい。
この物語は、ある意味「ちゅらさん」メソッドに基づいている。
下宿という一つ屋根の下に他人が肩を寄せ合って暮らす世界である。
主人公が「主役」である必然性が薄く、その周りの人に起こることがドラマを引き立てるのだ。


だから、まわりのキャラ立ちが重要なのだが、3人に注目したい。
まずは、主人公の、実は祖母であった、冨司純子扮する田中初音である。
この人はこのドラマの救世主である。
下宿の主人であり、主人公の祖母であり、何より大女優が扮する強烈なツンデレキャラだからだ。


次に、子役前田航基扮する中岡民男だ。
無知で純粋で、恐れを知らない、その一言はストーリーを暗示し、ガイドする。


そして、とことん間が悪い、鰹節屋の社長、趙萊和扮する浜野一もいい味を出している。
主人公に思いを寄せ、過度に心配しすぎて、実の主人公の父親を泥棒と疑ってみたり、作曲家とわかれば周りがやきもきするなか、主人公へのプライベートレッスンを無理矢理取り付けてみたり、その方向性がおもしろいくらいズレているのだ。


とまあ、いろんなキャラがいることで、主人公に求められるのは、お姫様然と、まわりにかわいがられるものを持っていればいいのだ。
それは、お好み焼きを焼くエプロン姿のかわいらしさと、ちょっと下手なトランペットを吹く一所懸命さと、愛嬌にかかっていると言えよう。
(本筋であるところの、生まれ育ちの複雑さは、とくに魅力的でないので、この際すべて忘れておこう。)


つまり、役者の力量に応じたキャストというのが一つの優しさで、もう一つが下宿の擬制的な家族の優しさということである。


以上が僕の感じる今回の朝ドラの優しさであるが、もう1つつっこんでおきたいのが、主人公の育ての父、村上錠だ。
扮しているのは遠藤憲一だが、彼といえば、フジ系で「白い春」の時は大橋のぞみを養子に引き取っていたような。。。


さて、今週、何だか安田成美扮する育ての母に、不謹慎すぎるまでに堂々と死亡フラグがたっているのだが、どうなることか。
このドラマの今後にこれからも注目したい。

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