アンパンマンの深淵

今更釣られます。

アンパンマンがチビ達に及ぼす深刻な悪影響について
 それよりも私は、アンパンマンがチビ達に植え付けているもっと深刻な思想があると考えています。
 それは、「汚い(汚そう、清潔感が無い)存在は、それだけで悪なので敵とみなしてよろしい」です。
 実際のアニメ作品の中で、アンクル・ジャムもアンパンマンもそんな事言いやしません。
 しかし、あの世界の住人達は大概、ばいきんまんが例の乗り物に乗ってうろついているのを見かけるや否や、特に何も仕掛けてこなくても、恐怖の顔や怒りの顔を見せます。現実の社会で言う「差別」とかいうやつです。

果たして実際にそうなのでしょうか。
僕もそんなによく見ているわけではないですが、少なくとも作者の考えを見ると、とても的はずれに思います。

http://www.jidoukan.or.jp/info/infopaper_2003_autumn.php
 アンパンは外はブレッドで外国製、中のアンは日本製。まさに現代の日本人の姿だと思いませんか。一方バイキンマンは、食品の敵。人間にとっても最大の敵はバイ菌。でもよく考えるとパンも酵母菌がなければできない。人間だって無菌室に入れられて一歩外にでたら死んでしまいます。共存して生きている。だからアンパンマンバイキンマンを徹底的にやっつけることはない。敵であり味方なんですよ。
アンパンマンができるまで その3 - 愚仮面
アンパンマンの誕生秘話が紹介されていて、グッジョブな記事です。

アンパンマンがダメなら、子どもに何を見せればよいのでしょう?
バイキンマンアンパンマンが制裁を加えるのは、バイキンマンのいたずらが度を過ぎた時ではありませんか。
それに、バイキンマンフルボッコにせず、アンパンチで済ませるアンパンマンのサンクションは、過度であるとは考えられませんし、アンパンマンバイキンマンを絶交することもなく、関係の継続を前提とした緩やかな許しがそこにはあります。


乳幼児への精神の影響がどんなものかは僕には未知ですが、むしろ他人を思いやり、他人を助けるために自己犠牲を惜しまないアンパンマンは、安心感を与える存在だと思います。
その証拠に、

http://www.asahi.com/national/update/0627/OSK200906270002.html
乳児は「アンパンマン」が好き NTT調査
2009年6月28日4時58分

 乳幼児が最初に口にするキャラクター名はアンパンマン――。NTTコミュニケーション科学基礎研究所(京都府精華町)の小林哲生研究員らの調査でこんな結果が出た。平均生後18.3カ月で話していた。小林研究員は「発音しやすく、丸い顔などが親しみやすいためでは」とみている。

という記事もあります。
作者のやなせたかしさんのコメントが、幼児に受けていることさえ懐疑的なのはおいといて(笑)、7/4の世界一受けたい授業では、ある進行方向に向かって進もうとして、傾斜に立ち往生している丸い図形があった時に、サポートして上まで押し上げる三角形を見せて、次に同じ場面で上からやってきて邪魔する四角形を見せた後、乳児に二つの三角と四角の模型を持っていくと、三角の模型を選ぶという調査結果が紹介されていました。
これをあわせて考えれば、乳児の選択は安心感の証左と言えるでしょう。


暴力に反対するのは当然ですが、なくならないのは現実。
やなせさんは、上に紹介した記事で次のようにも言ってます。

命っていうのはある種のストレスがないとだめ。当然競争社会の中では落伍してくる人も出てきます。そういった人や高齢者、病気の人を助けられる世の中であるべきでしょうね。だから小学校で最近あった、運動会のかけっこで全員が一番というのは間違いなんですよ。活力がなくなっちゃいますよね。

まさに、そのとおり!
そのストレスに処する力こそ生きる力であり、「無菌室」で痛みも摩擦も知らずに育っていくことのほうがよほど危険だと思います。


あれこれ言ってきましたが、アンパンマンの是非論については、最終的に親としての判断というきわめて主観的なものになってきます。
だから、親が縦横の人づきあいのなかから、人として何を育むべきかを見極めて伝えるしかないというだけの話に帰するわけですが、僕が親になった時はきっと、自分が子どもの時のように、子どもにもアンパンマンを見せるでしょう。
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人生なんて夢だけど
アンパンマンの遺書