NHK土曜ドラマ「再生の町」と不安の時代

NHKの土曜9時が熱い。
愛と憎しみの間で葛藤する刑事を描いた「リミット」に続き、放映されているのが地方財政問題に骨太に斬り込んだ「再生の町」である。


「再生の町」とは、財政破綻寸前の架空の都市「なみはや市」が、再起をかけてニュータウン事業を凍結するか、推進するか、それをめぐる問題に立ち向かうなみはや市の財政再建プロジェクトを描いたドラマである。


八つ場ダム開発問題とドンぴしゃでタイムリーなテーマである。
このドラマでは、財政再建と住民の健康と安全を第一に考えての、開発凍結という選択が基本線として、その合意形成にあたっての地方公務員=財政再建プロジェクトチームの働きがクローズアップされている。
国からの補助金、それを引っ張ってくる政治家、補助金頼みの地方産業。
そんなしがらみと、お金のかかる福祉といったサービスの充実にかかる要望との折り合いをどうつけていくのか。
その問題に真摯に向き合い、時には憎まれ役を買わねばならない地方公務員たちの姿には胸を打たれるものがある。


結局、安心と希望のどちらを優先すべきかというところが、「再生の町」が提起する問題の帰する所であり、安心そして希望という順番で整理すべきというのが骨子でありそうである。
ここを考えると、逆説的に、現在の社会問題は「不安」をキーに通底しているということが言えそうな気がする。


我々は戦後、脅威の成長を遂げた。
成長という「希望」への信頼は、絶大なものとして、我々のメンタリティーに深く根付いている。
その信頼が傾いてきたからこそ、我々は「不安」を抱いているというのが実情なのかも知れない。


だから、このドラマに学ぶ必要がある。
我々がこれから築いていかなければならないものは何なのか。
巨利さえも産み出したきらびやかな成長ではなく、まずは泥臭い維持であろう。
泥臭い維持のなかで、成長への素地の形成をもねらう。
知恵のだしどころこそ、今ではあるまいか。